貴方様に捧げます   ※にょたえろあり注意です。苦手な方は逃げましょう…


 「なんでもな、どっかのパーティーでアンタに岡惚れした、さる有力者の奥方がおられるんだが…」
 ……じゃあなにか?今度の仕事はその奥方の火遊びに付き合えってか?……
 いきなり帝愛の本部に呼び出され、挨拶もそこそこに語られた黒服の言葉に、いささか遠藤はゲンナリする。
 裏稼業で小さいながらも会社の『取締役社長』である。
 生きてきた世界が世界だけに、裏ごとには躊躇なく手を染めるが、今来た話は自分のポジションを築いてきた大の男が、仕事でするようなことではない。もっとも、『セレブな女性のエスコートをしておこづかいまでもらえます』とかなんとかの出張ホスト詐欺のようなものに引っかかる、いい年をした中年男もいるようではあるが……
 金も何も持たざる駆け出しの頃なら、そんな仕事でも請けようという気持ちにもなるだろうし、またもし現在が、半端でない経営難であったのなら、仕事を選んでもいられないが……
 カイジから巻き上げた金で経営は順調。ついでに転がり込んできた野良犬はなにやらやきもち妬きで、そこがまた可愛いところではあるのだが、こんな仕事を請けたと何かの拍子に知られでもしたら?
 「美人なのか?その奥方」
 いきなり『断る!』とか言えば『誰かに操でも立てているのか?』とネチネチやられそうでうっとうしいので、表面上、多少感心があるように振舞ってみる。
 わざわざ帝愛を通してくるあたりからして、いろんな意味で訳あり物件だというのは想像に難くない。適当に情報を収集しつつ、難癖をつけて断っちまおうというのが遠藤のハラである。が…
 「……いや、お前さんが直接相手するわけじゃないんだ。わかりやすく言えば、ナニの型さえ取らせてもらえれば、あとはこちらで処理する」
 「は?」
 「だから、もっと簡単に言えば、大人のオモチャの原型をだな……」
 遠藤のこめかみからひたいにかけて、ピキピキ青筋が浮いた。
 「断るっ!!」
 どんな状態で型を取るつもりかは知らないが、露出狂でもないのにトイレ以外で、しかも自分がいたす目的以外で臨戦態勢のモノを人目に晒すなど言語道断である。
 「そんなこと、どうせ顔がついてるわけじゃないだろうに、地底から適当なのを見繕ってやらせりゃいいだろうがっ!」
 言いながら、まさか全身の型をとるわけじゃあるまいな?と、遠藤は内心ヒヤリとする。そんな状態の自分の裸像など、カイジに限らず何かの拍子に知り合いに見られでもしたら、たまったものではない。
 黒服は小さく溜息をついた。
 「依頼してきたのがその奥方の旦那でな。いささか変わった愛妻家だそうだ。浮気は許さんがお道具くらいならいいだろうと。で、プレゼントするには、やっぱり本物から型を取ったほうがいいだろうというわけで、証明書代わりにすでにこの時点からカメラが回っている」
 本当に会長の経営姿勢が如実に具現化されているというか……盗撮が好きな企業である。
 遠藤、もはやあきれ果てて、口あんぐり状態に陥りかけたが、敵城では一瞬の放心も命取り……何も言わずきびすを返し、タッタカと大股早足で出入り口のドアのノブを掴んだところで、自分が押す前に扉が引かれる。
 現れたのはまるでアドバルーンのような巨漢の黒服である。その肉体で入り口が完全にふさがったかのようだ。
 あまり暴れても、今後の仕事に差し障るかとチラリと思うが、背に腹は変えられない。
 腕にはそれなりに自信もある遠藤は、とりあえず倒しちまおうと、こぶしを握り厚い脂肪の中へ叩き込んだが、その巨体はびくともせず…そればかりは図体に似合わないすばやさで、逆に遠藤にボディブローをかまして、これがきれいにみぞおちにHIT。
 「ゲフ…ッ」と引き攣れた声を上げて遠藤はその場に崩れ落ちた。


 さて……知らぬほうが幸せ…ということはこの世に多いことこの上ないが、この場合の遠藤も、気絶したままの方が幸せというものであろう。
 だが、男の大事な部分に、なにやらヒヤリとしたものが塗られれば、目も覚めるというもので……
 「なんだこりゃっ!!」
 素っ頓狂な声もあげようというもの。なにやら椅子に座らされているのだが、気付くと異変を如実に体感している場所に瞬時に目が行ってしまい……遠藤が目にしたものは、自分のジュニアになにやら無数のコードがついた器具が装着されている。その時点でも充分異様なのだが、その器具はなにやらユーモラスな魚の形状をしており、遠藤のナニを口でぱっくり咥えているような様相……
 それは、今では入り口だけは女の花びらを模したものやら、鼻から下だけ顔があってもかえって恐いだけのようなやけにリアルな口の造型やらが普及している、いわゆる電動ホールの元祖……しびれふぐである。
 人ごとなら充分笑い事だが、自分のことであれば、これはもう怒るしかない。
 「ふざけるなっ!どういうことだ、これはっ」
 怒鳴りながら、とにかくこれを外そうとあがくのだが、手足はなにやら頑丈な金属製の椅子に拘束され、びくともしない。
 「そんなに暴れるな。こちらの装置がつけられない」
 そんな遠藤の様子を嘲笑するでも哀れむでもなく、黒服たちは淡々と作業を進める。
 こちらの装置と言われたものは、やはり無数のコードが着いた、金属製のヘッドギアのようなもの……B級のSF映画だと、このような器具で洗脳されたり処刑されたりするのが、比較的多いパターンである。
 「暴れるなってのが無理だっ!このばかやろうっ!!」
 必要に応じて熱くはなるが、基本は冷静な男である遠藤も、あまりの事態に冷静の欠片もなくなっている。
 確かに嫌である。得体の知れないマシーンを装着されたあげく、ぽっくりいっちゃったら。しかも股間にはしびれふぐ……嫌な死に方ランキングがあったら、男性部門で5本の指の中に入るだろう。
 黒服はいささか『やれやれ…』という顔をした。
 「脳にちょっとした刺激を送り込めば、体が受けるのと同じ刺激を何もせずとも受けることができる…いわば楽しい夢をノーリスクでリアルに体感できる機械だ。それにより性的な刺激を受け、臨戦態勢になったところを、股間の器具が形状を読み取るようになっている。経験を積んだ専業の男優でもない限り、見られながらおっ勃てるってのは大概の男は無理だからな。まぁ実験の上では副作用はないはずだから、せいぜい楽しむといい」
 「『はず』ってのはなんだ、『はず』ってのはっ!」
 少し安心させようとした説明が裏目に出たらしい…ああ、俺って口下手だからなぁ…と思いつつ、黒服はクロロフォルムを含ませたガーゼを遠藤の口元に押し当てる。
 なかなか頑強に抵抗していた遠藤も、最後にはくたっとおとなしくなり…無抵抗な遠藤の頭に、怪しげな装置が装着された。


 「……さん……えん……さん…」
 誰かの声がする。良く知った誰かの声が…
 「遠藤さんっ!!」
 「お前か……」
 深く眠ったような、まだ眠り足りないような、ふわふわとした心地で目覚めて見れば、カイジが必死に遠藤の体を揺さぶっていた。
 自分はどうしたんだったか…と、ぼんやりした頭で考えをめぐらせるが、とりあえず裸でベッドの上で、カイジもいるんだから、まぁ一戦交えたあとなんだろうなぁ…なぞと、はっきりしない頭で考える遠藤だが、目の前のカイジにいささかの違和感がある。
 なにやら微妙に輪郭が丸く、全体的フォルムがいつもよりなお細く、柔らかい感じがする。
 そしてなにやらカイジらしくもなく、胸元からしっかりバスタオルを巻きつけており……
 あれ?
 遠藤は目をこすった。
 カイジの胸元にささやかながら谷間がある。
 いや、男でも鍛え方次第では多少の谷間ができることもあるし…でもいちんちやそこらで、谷間ができるほど大胸筋やらなんやらは鍛えられないよなぁ……
 そして見れば見るほど、その谷間を形成する丘は、ささやかではあるが非常に柔らかそうで、とても筋肉ベースで構成されているとは思えない。
 遠藤の視線がどこに集中しているのかがわかったようで、カイジの頬にカッと血の気が昇り、胸元をかき合わせるように隠して、視線をそらした。
 「遠藤さん…どうしよう…俺っ…」
 目を合わせないようにしながらも、相談する相手が他におらず、なにやら半べそをかきながら遠藤に訴える。
 「どうしよう…って、なにが?」
 何かがいつもと違う、おかしいと思いつつも、未だに半覚醒状態の遠藤は、現状がまだ理解できない。
 異変に気付かないことに対してか、それともわかってて困惑する自分を面白がっているとでも思ったのか、カイジはキュッとくちびるを噛み締めると、遠藤の額を平手でおもいっきりビタンと叩いた。
 「いてえっ」
 「目ぇ醒めたかっ!?遠藤っ!!」
 恨めしげに遠藤を睨むカイジを、改めて見ると…
 声はいつものハスキーがかったものだが、どことなく甘く、また涙で潤んでいるせいなのか、黒目の面積がいつもよりやや増量中…で、湿った睫毛はばさばさと音を立てそうに長く濃い。
 眉毛のお手入れさえきちんとできたら、なかなかの美人……なのか?
 美人という主に女性に対する単語が思い浮かび、また、かき合わされた胸元や全体的なその肢体…
 「まさか、女になっちまったとか、そんなマンガみてぇなこと……」
 そんなことが起こるはずないと思いつつ、冗談めかして言ってみれば、
 「に、なっちゃったんだよっ、このばかぁ…っ」
 と、カイジがグシュリと鼻を鳴らして答えるものだから、遠藤、呆然とした。
 いや、確かに掃除だのなんだのマメだし、別に女々しいとかそういうんじゃないが、女の子に生まれたらもう少し幸せになったんじゃねぇか?とは思ったこともある。ある…が、まさかなぁ…
 遠藤は頭がクラクラしてきた……が、困惑しているのは遠藤よりも当然カイジの方である。
 なすすべない上、唯一頼りとする遠藤が、口をあんぐりあけて呆けているばかりなので、カイジはもう、ただひたすらグシュグシュと泣くばかりであった。
 さすがに同じ男としては気の毒この上ないし、慰めになるようなことでも言えればいいのだが……何を言ったところで、気休めにすらなるまい。
 遠藤は一つ溜め息をついたが……ふと、甘い女の匂いにクラリとする。
 双方裸でベッドという状態で、そんな香りを出されては、たまったものではない。
 泣く女に無理強いするようなことは、遠藤の倫理に反することだが……相手はカイジである。
 頭の中で『カイジには何をしてもいいのだ』という声が聞こえた。
 そんなことはない…と遠藤の良心にあたるものが反論するが、『少なくともここではなにをしても許されるのだ』という声が、次第に大きくリフレインされる。それと同時に甘やかな花のようでいてどこか本能的な香りも強くなっていった。
 『あどけない顔をして、誘っているのは向こうじゃないか?』
 つれなく見えても実は惚れられている…最後はそこに甘えながらも、おっかなびっくりの裏返しで強引にカイジと関係を結んできた遠藤の理性の糸は、この段階でぷつんと切れた。
 そうだ……いつも無理矢理奪っても、結局ヤツは喜んでるじゃないか……
 遠藤はカイジの元におずおずと進み、頬を伝う涙を舌先ですくい取る。
 「泣いてもいいが、目ぇこするな。化けモンみたいに腫れ上がっちまうぞ?」
 「舐めるなっ!……女じゃねぇんだから、別にそれくらいっ…」
 そう言いつのるカイジに「男でもみっともねぇだろ」と言いながら、遠藤はさらにカイジの涙を舐めあげた。柔らかな頬の感触もともなって、淡い潮の味がどこか甘露にも思える。
 この空間ではなにをしても許される……得体の知れない声がもたらしたそれはもはや、根拠はないが確かなこととして遠藤の中に根付いていた。
 頬から伝うようにして、自分のくちびるでカイジのくちびるに触れる。
 今は女の子なのだから、最初からいつものように強引にしてはかわいそうなので、羽毛で触れるように優しく優しく、くちびるを食んだ。
 「やめろよ…っ……こんなことしてるときじゃ…」
 先ほどとは違う輝きに潤んだ目でうっとりと見上げられながら、そんなことを言われたところで、説得力はない。大体、やめろといいながら、遠藤がやめるまでそのくちづけを受け入れていたのは、他ならぬカイジである。
 「そんなことを言っていいのか?明日には戻っちまうかもしれねぇのに……どうせなら女の感覚ってヤツを楽しめばいいじゃねぇか」
 ヤクザな口調だが、くちづけや指先はひたすらに優しい…
 押し倒すというより、そっと寝かされ、首筋や鎖骨のあたりに優しく唇を落とされ、バスタオルの上から脇腹の辺りをくすぐるように撫でられているうちに、最後の砦のように必死でバスタオルを掻き合せていたカイジの指が、徐々に緩む。
 力の抜けた手に自分のそれを重ねて、遠藤はそっと外し、壊れ物を保護する布をめくるように、慎重にカイジの胸元のバスタオルをはぐった。
 優美な曲線で作られたしなやかな肢体が現れ、遠藤はゴクリと生唾を飲み込む。
 「や……っ…」
 激しい羞恥で顔を真っ赤にして、カイジが再び我が身を隠そうとするが、遠藤はそれを許さない。乱暴にならないように気をつけながらもカイジの両手首を押さえ、その合間に可愛らしい胸にそっとくちづける。
 いつもより濃く色づいたそこは、小さな果実のようで、まるでほのかににじみ出る果汁を味わうように音を立てて吸えば、カイジはビクンと背中をしならせるが、声はなにやら甘いのに、カイジは「嫌だっ」と、涙目で拒絶した。
 反応は悪くねぇのに…と思いながらも、遠藤はすぐに回答に行き着く。
 要は女の体で女として感じてしまうことが恐いのだ。
 だが、カイジは快楽に弱い。
 先ほども、緩やかに押し続ければ、あっけないほど簡単に砦を開放した彼である。
 一度胸を離れ、カイジが本来より弱い、左頬の傷痕にくちびるを沿わせ、耳の継ぎ目を舌先でなぞる。
 「…あ…んっ」
 「かわいいなぁ……お前は」
 つい思ったことが滑り出る。
 「ヘンなこというなっ!!」
 案の定カイジは反抗するが、そんなことを言ったら、いつもなら平手くらい返ってきそうなものなのに、紅潮する頬をさらに赤くして、ぷいっと顔を背け、背中を向けてしまうだけと、反応がどこか柔らかい。今は女の子だからだろうか?
 「かわいいものをかわいいって言ってなにが悪い?」
 カイジの長い髪を弄びながら、自分の口からポンポン出てくるセリフに、遠藤はモヤモヤしていたものがストンと腑に落ちた。
 ……ああ、俺はカイジをかわいがりたかったのか……
 男同士ということもあるのだろうが、遠藤とカイジの場合、心が惹かれあっているという確信めいたものがあっても、これまでの生き方やらなにやらで、お互い相容れないものも当然あり…それでも求めようとすれば、パワーゲームのように相手を屈服せねばならない。
 確かにそれは楽しいゲームなのだが、時として疲れるものでもある。
 だが、今はそれが許される……
 手入れの行き届いていない長い髪をかきあげて、むき出しになった白いうなじに、そして小さくなった背中にと、キスの雨を降らせれば、カイジは体を震わせながら、可愛らしい声で啼き続けた。まるで長雨に打たれて震える、迷子の仔猫のようである。
 やはり小振りだが、形の良い臀部にそっと大きな手のひらを這わせると、カイジは「ひっ…」と声をつめてしまう。初めて痴漢にでも遭った心持ちらしい…
 遠藤は苦笑した。
 聞いたら絶対そうとは言わんだろうが、恐いんだろうな。
 少しだけ余裕が出てきて、改めてそう思うと、やはりカイジが憐れになった。
 当たり前である。ついさっきまで男の体だったのに、いきなり女のそれになってしまったのだから。そして、本当に嫌なことだったら、男の筋力やら体力となれば死ぬ気で抵抗すればなんとかなるとしても、鍛えていない女の体ではどうにもならない…
 「…どうしても嫌か?」
 カイジは沈黙。頷くでも首を横に振るでもない。
 遠藤は寂しくなったが、心臓が『かわいいかわいい』と絶え間なく鼓動を刻んでいるようで、触れたくてたまらなくなる。
 まるで思春期のガキのようだと、いささか自分で自分に呆れたが、求める心に逆らえない。
 「何もしねぇから…ちょっとだけ、夢見せてくれ…なぁ?」
 そう、背中から腕を回して、そっと抱きしめた。
 自分がしょうもない変質者にでもなったようで、なにやら情けない気分になるが、それでも鼻腔をくすぐる芳香と、温かく柔らかな感触に陶然となる。
 こんな感覚、いつ以来だろう…
 昔、初めて所帯を持ってもいいと思った女がいた。彼女と身を寄せ合ったときも、こんな気分だったような気がする…
 結局彼女とは別れてしまい…また、他に付き合う女がいないでもなかったが、もし、自分の仕事がらみでトラブルに巻き込まれたとき、自分に守りきることができるのかと考えると、結婚だのなんだの言い出す前に別れてしまうことがほとんどだった。
 カイジはどうだろうか?
 きっかけは遠藤かもしれないが、いまや立派に当人が火種である。
 一度は自分から手放したが、こうして転がり込んできて、なおかつ帝愛に目をつけられている以上、自分のような人間がついていた方が、むしろ多少は安全…なのかもしれない。
 それにカイジなら、どんな最悪な状況でも、ギリギリのところで自分でなんとか切り抜けてくる。だから傍に置いておける。
 そんな存在が子供を産める体となって、いま自分の傍らにいるのだ……
 実際に産めるかどうかはわからぬが、それでも自分の人生設計から外していた『自分の家族』というものに、なにやら希望が湧いてくる。
 受け入れて欲しい……欲しいが……
 しばらくカイジはなされるがまま抱きしめられていたが、そのうち自分を拘束する腕を緩めると遠藤に向き直り、パチンと平手で遠藤の頬を叩いた。
 「ばかやろうっ!んな硬いもんグリグリ押し付けられて、何もしねぇが通るかっ!!」
 ……確かに従来以上に、遠藤の意思とは関わりなくやる気ギンギンのものを押し付けられては、『何もしない』など説得力のかけらもない。
 カイジは不機嫌丸出しのぶんむくれ顔をしていたが、しばらくすると顔を真っ赤にして遠藤をベッドに押し付け、自分はそろそろと遠藤の下半身に移動……
 「お……おいっ!!」
 「こんな凶器があったら落ち着けねぇだろっ!!ちょ…ちょっとだけ、付き合ってやるけど、絶対本番はやだかんなっ!!」
 そう言うなりカイジは、ささやかながら柔らかい双丘を、遠藤の怒張に押し当てた。
 そんなことをしなくても…と言ってやりたい遠藤だが、やめさせることがもったいなくて、それが出来ない。ロリコンの気はないが、ふにっとした感触が嬉しすぎるっ……なによりカイジが自分からしてくれているのだ。
 男のサガとはいえ、ほおって置けば鼻の下が2mくらい伸びてしまいそうなだらしなさの遠藤である。
 一方カイジは、AVで学習したように遠藤を上手く挟めず、非常に苦慮していた。
 カイジがお世話になったAV女優たちとは、圧倒的にボリュームが違うのだから仕方がないことだが、必死で胸を寄せても、やはり挟むというより押し当てながらこするといった、ローションプレイに近いような状態になるため、思い通りにならないのは悔しいらしく、なにやら涙目である。
 ただ、その作業も続けているうちに、普段よりも先端が高くなった乳首の先で遠藤の鈴口をくすぐると、遠藤の反応がちょっと良くなるので、それをちょっと重点的にしながら、時折舌先で先っぽをくすぐってみたりと、コツを掴んだらしい。
 上目遣いで『どう?』と、まなざしで聞いてくるのには参った。
 表情に初々しさと艶っぽさが、適度にして絶妙にブレンドされている。
 「ああ……だめ…だっ…」
 カイジの体を引き剥がす前に、弾けるほうが先だった。
 カイジの顔に、胸にと、白い飛沫が飛び散り、とろりと滴る。
 カイジは瞬間、きょとんとし……何が起こったか認識すると、顔をゆでダコのようにしてわなないた。
 怒っている…怒っているのだが、感情が迸りすぎて言葉が出ないらしい。
 「すまん…本当に、すまんっ」
 謝りながら遠藤は、バスタオルの端でカイジの顔を、胸を拭いてやる。
 どうしよう…かわいい…かわいい…
 本番は絶対嫌だと言われても、ここまでされたら続きがしたいっ!
 「やっ…やめろって……」
 つい今まで、本当に申し訳なさそうにしながら、タオルで自分を拭いてくれていた遠藤が、いきなりまた自分を押し倒せば、それは動揺するというもの。しかも今度はいきなり足を開いてくるのである。
 「あんな可愛いことされて、『最後までは嫌だ』なんぞ聞けるかっ!!」
 確かに蛇の生殺し……局部をコチコチにしようが、できうる限り紳士らしくあろうとした遠藤を刺激したのはカイジの方である。
 「いっ…一発抜いたら収まれよっ、バカッ」
 左手が恋人ならそれで収まるが、ここまで来たらそれは無理っ!
 遠藤はカイジのまたぐらに顔を突っ込もうとし、カイジはそれを必死で阻止せんと、遠藤の髪を強くひっぱり……意外とごっそり抜けたので、ちょっと後悔した隙に、淡い茂みを掻き分けられた。
 「ひっ…やっ…」
 そこには可愛らしいピンク色の花芽がひくりと息づいていた。
 舌先でつつくと、カイジの体がビクンと跳ねた。
 「やだっ…み…見るな……」
 言われなくとも見たいが、そう言われればますます見たくなるのが人の心というもの。
 びちびちと獲れたての魚のように跳ね回り、遠藤に抵抗する足を制しつつ、遠藤の視線は花芽の下の花園へ……
 とろりと蜜を溢れさせるそこを目の当たりにして、遠藤はなにやら感慨を覚える。
 自分のためだけに花開いた器官だった。
 いとおしさに水音を立てて口づけすれば、カイジは観念したのか急におとなしくなる。
 ただ体は小刻みに震えていた……泣いているのである。
 「い…いつものトコならいいから……そこは勘弁してくれ……」
 「そんなに俺が嫌いか?」
 なんだかんだ言われても、想い想われている自覚があったがゆえに、ここまで拒まれると遠藤は切なくなる。
 だがその問いかけに、カイジは意外なほど素直に、ふるふると首を横に振った。
 「……だって……もし赤ちゃんができたら……戻れなくなる」
 戻れなくなる…その言葉は2重の意味を伴っていた。
 男の体に戻れなくなる、その可能性。そして今は遠藤の所に身を寄せていても、基本的につかず離れずの関係性…多分一番心地のよい距離感なのだ。そこに戻れなくなる。
 それが恐ろしいのだ。
 だが、その言葉を聞いて、遠藤の心は決まってしまった。
 戻れないのならば、進めばいいのだ。
 「お前が恐がるのもわかるが、俺はお前と俺の子供だから欲しいんだ……こればっかりは授かりもんだが、それでも授かっちまったら産んでくれっ!」
 カイジは一瞬目を大きく見開いて、何を言われたかわからないというような顔になったが、言葉の意味が徐々に染みたのか、眦からみるみる涙が零れ落ち…最後に本当に小さく頷いた。
 遠藤は一生大切にすると誓うように、抱え上げた左足の爪先に軽くくちづけると、あとは本能の赴くまま……

 もはやすべてが薔薇色であった。

 


 「え、なに?そんなに?」
 黒服より報告を受けた和也は想わぬ数値に驚きの声を上げる。
 自分のオモチャが心奪われている存在ともなれば、男性のシンボルの優劣で自分が多少なりとも劣る側であらば、いささかショックも受けそうなものであるが、どことなく面白がるその響きには、劣等感のようなものは微塵も感じられない。
 まぁ、人間がそんな部分で馬と競っても仕方がないということか…
 「はい、危うくマリーちゃん2007(型取用しびれふぐの名称)の臨界点を超えるところでした。……ところで、残滓の方を遺伝子研究部が実験用に欲しがっているのですが、そちらに回してよろしいでしょうか?」
 「ああ、好きにしなよ。もう下がっていい」
 黒服を下がらせると、和也は楽しいプランに一人ニヤニヤしていた。
 確かにどこぞの有力者からのオーダーというのも嘘ではないのだが…せっかくカイジの想い人のそんな面白い型をとっておいて、好事家専用ではもったいない。
 折も折、時は3月であった。
 バレンタインデーはもらう一方。ホワイトデーなど気にも留めることなどなかった和也だが、今年のバレンタインに部下たちより『日頃の感謝の印』として受け取った、カイジを様々なチョコレートでセルフコーティングして味わう趣向は、なかなか気に入った。
 まぁその趣向を用意した黒服たちには、ボーナス査定でプラスにつけてやればいいことであるが、なにやらそれが元で珍しくやる気になったバイトを解雇されたというカイジには、ホワイトデーにお返しとやらをくれてやらねばなるまい。
 なんでも巷では、本命に対してはバレンタインにもらったものの3倍返しをホワイトデーに行わなければならないものらしい……
 和也がカイジから受け取ったものは『娯楽』である。ならば、カイジには自分の3倍は楽しんでいただかなくてはならないが、和也はこういった場面では実に気前のいい男だった。
 3倍といわず、5倍でも10倍でも…
 「アンタの大好きな遠藤さんの特製ほだれ飴を何本でも…そして、甘いだけで飽きないように、俺の苦い生ほだれで、思う存分楽しませてやるっ!待ってろよっカイジさん」
 そう……カイジを楽しませるというより、断然自分が楽しいイベントである。
 和也の高笑いが響く中、兵藤邸からずいぶん離れた遠藤のマンションで、カイジは嫌な予感に、ぶるっと身を震わせた。

 

 

 

 

 

 




































 

 

 

 

 

 

 


 ざれごと

 タイトルは『子作りしましょ♪』のアレからです。捧げてるってより奪われてますが。
 ネタは某K家様とのメールのやり取りで「ホワイトデーは遠藤氏で型をとったほだれ飴で!」とこっちが振ったら「かねひろさん書いて」という旨のお返事が帰って来ました。
 くらえっ因果応報っ!?…ええ、こちとらメタボ大槻ですから(減量に失敗どころか増えててショックらしい…)
 ちなみに何年か前、ちゅっぱチャプスの電動で動くヤツを見た記憶があるんですが…アメ〜リカン産のヤツはわけがわからんのですが、和也坊ちゃんならこれを応用して、電動ほだれ飴くらい作らせそうです…
 …で、当方へタレなもので、遠藤氏のナニの型を取るまでで力尽きました……誰か、俺の意思をっ…ガクッ…今際の際にしては汚らわしい意思だなぁおい!

 ちなみにこの話、ほだれ飴でカイジをいじめる段はすっ飛ばして、なにやら重い話ができつつあるんですが…温度差すごいなぁ……